なぜ家康は久能山に眠るのか?日光との違いと1159段石段の秘密
静岡市駿河区の景勝地に鎮座し、全国の東照宮の総本社格として知られる久能山東照宮。徳川家康公が75年の激動の生涯を閉じ、その遺言によって「最初に埋葬された地」として名高い聖地です。絢爛豪華な社殿群は国宝に指定されており、近年も国内外から歴史ファンや参拝者が絶え間なく訪れています。
日光東照宮の知名度に隠れがちですが、家康公の遺骸が実際に眠る地として、歴史的価値と信仰の重みは唯一無二です。なぜ家康公は日光ではなくこの地を最初の眠りの地に選んだのか。表参道にそびえる1159段の石段に込められた意味や、駿河湾を望む絶景、注目の限定御朱印や周辺グルメまで、参拝前に知っておくべき情報を徹底取材しました。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:家康公の遺言により遺骸が直接埋葬された「東照宮の原点」であり、西方の豊臣勢力への睨みと天下泰平の結界としての役割を担う。
- 要点2:参拝ルートは「1159段(いちいちごくろうさん)の石段」を登る表参道と、「日本平ロープウェイ」を利用する山頂経由の2系統が存在する。
- 要点3:国宝の権現造社殿、家康公の愛用品を収めた博物館に加え、模型の世界首都・静岡ならではの「プラモデル絵馬」や名物・石垣いちご狩りなど見どころが満載。
【歴史の真相】なぜ日光ではなく久能山なのか?徳川家康が遺言に託した「最初の墓所」の理由
日光東照宮と久能山東照宮の最大の違いは、「家康公の御遺骸が今も留まる場所であるか否か」という点にあります。元和2年(1616年)4月17日、駿府城で息を引き取った家康公は、臨終に際して側近の本多正純や南光坊天海らに次のような遺言を遺しました。
「遺体は駿州久能山に納め、一周忌が過ぎたのちに下野国日光山に小さな堂を建てて勧請せよ」
この言葉通り、家康公の遺骸はその夜のうちに久能山へ運ばれ、山頂の神廟(しんびょう)に埋葬されました。日光東照宮は一周忌を経て分霊を祀った場所であり、魂を鎮める国家鎮護の神域であるのに対し、久能山は肉体が眠る始まりの聖地です。
久能山が選ばれた最大の理由は、軍事・風水両面における要衝であった点にあります。武田信玄がかつて山城を築いたほどの要害であり、神廟は「西(京都・大坂方面)」を向いて建てられています。これは西国の大名たちに再び戦乱を起こさせず、江戸幕府による天下泰平を死してなお守り続けるという、家康公の強い執念の表れと伝えられています。逆境を乗り越えて天下人へと登り詰めた家康公の神気が漂うことから、現在では出世運・勝負運・延命長寿の強力なパワースポットとして信仰を集めています。
【表参道vsロープウェイ】1159段の石段を登る意味と日本平経由のアクセス比較・所要時間
久能山東照宮へのアクセスには、海岸側から歩いて登る「表参道ルート」と、景勝地・日本平山頂から空中散歩を楽しむ「日本平ロープウェイルート」の2通りがあります。
表参道ルートは、麓の鳥居から社殿まで1159段のつづら折りの石段が続きます。この段数は「いちいちごくろうさん(1159)」の語呂合わせでも親しまれており、一段登るごとに駿河湾の青い海が視界いっぱいに広がるパノラマビューが魅力です。かつて参拝した武士たちと同じ目線で歴史を追体験できますが、傾斜がきついためスニーカーなどの歩きやすい靴が欠かせません。
一方、体力に不安がある方や観光をスムーズに進めたい方には、日本平山頂から谷を渡る日本平ロープウェイが適しています。所要時間は片道約5分で、四季折々の屏風谷の渓谷美を眼下に眺めながら社殿のすぐ下まで直行できます。
参拝の所要時間の目安は、ロープウェイ利用で社殿と博物館をじっくり巡る場合「約1時間〜1時間半」。表参道の石段を往復する場合は「約2時間〜2時間半」を見込んでおくと安心です。車で訪れる場合、日本平山頂側には約200台収容の無料駐車場が完備されていますが、表参道麓(国道150号沿い)の駐車場は民間有料駐車場(1回500円程度)が中心となります。
【国宝社殿の見どころ】極彩色が彩る権現造の最高峰と平和を祈る彫刻の秘密
久能山東照宮の社殿(本殿・石の間・拝殿)は、2代将軍・徳川秀忠公の命により、名工・中井正清の手でわずか1年7ヶ月という驚異的な短期間で建立されました。全国に数ある東照宮の建築様式である「権現造(ごんげんづくり)」の発祥であり、2010年に国宝に指定されています。
2006年に完了した「平成の大修理」によって、50年に一度の塗り替えが行われ、創建当時の眩いばかりの極彩色と漆塗りが甦りました。社殿を飾る彫刻群には、平和への祈りを象徴する意匠が散りばめられています。
特に注目すべきは、本殿西側の軒下にある「目彫りの蟇股(逆さ葵)」や、拝殿に施された「平和を愛する鳥獣の彫刻」です。戦乱のない世を願って描かれた霊獣・獏(ばく)や麒麟、中国の故事に倣った「司馬温公の瓶割り」など、命の大切さを説く彫刻が随所に配置されています。日光東照宮の豪華絢爛さのプロトタイプとなった緻密な装飾美は、建築ファンならずとも息を呑む完成度を誇ります。
【聖地ならではの体験】限定御朱印と話題の「プラモデル絵馬」・久能山東照宮博物館の至宝
参拝時に見逃せないのが、境内の社務所でいただける御朱印と授与品です。通常の墨書・葵の御紋入りの御朱印に加え、季節の行事や夜間特別拝観時に頒布される金文字・限定切り絵御朱印は高い人気を誇ります。
さらにSNSを中心に大きな注目を集めているのが、静岡市が「模型の世界首都」と呼ばれることにちなんだ「プラモデル絵馬」です。プラモデルのパーツが枠に繋がった「ランナー」状態を模した木製絵馬で、自らの手でパーツを切り離して組み立てるユニークな仕掛けが施されています。静岡の地場産業であるプラモデル製造の歴史が、実は家康公が駿府城や東照宮造営のために全国から集めた宮大工や木彫職人の技術に端を発しているという歴史的ストーリーが背景にあります。
また、境内の一角にある久能山東照宮博物館には、徳川将軍家の歴代武器・武具をはじめとする2,000点以上の貴重な宝物が収蔵されています。中でも家康公が関ヶ原の戦いで着用したと伝わる重要文化財「歯朶具足(しだのぐそく)」や、慶長16年(1611年)にスペイン国王フェリペ3世から家康公へ贈られた日本最古の洋式時計「洋時計(国重要文化財)」は必見の歴史的至宝です。
【拝観料・割引・周辺情報】お得なセット券といちご海岸通りの石垣いちご狩り&駿河湾グルメ
久能山東照宮を効率的かつお得に楽しむためには、チケット選びが重要です。社殿の拝観料(大人500円・小中学生200円)と博物館の入館料(大人400円・小中学生200円)は、「社殿+博物館共通券(大人800円・小中学生300円)」を購入することで割引が適用されます。
日本平ロープウェイを利用する場合は、ロープウェイ往復運賃と東照宮拝観・博物館入館がすべてセットになった「3点セット券(大人2,150円)」がお得です。各種WEB前売りチケットやJAF会員優待などを活用すれば、さらなる割引を受けられるケースもあります。
参拝後の観光として外せないのが、表参道麓の国道150号沿い、通称「いちご海岸通り」で楽しめる石垣いちご狩りです。久能地区は明治時代から続く石垣いちご発祥の地であり、駿河湾の温暖な潮風とコンクリートブロックの蓄熱を利用して育てられた「章姫(あきひめ)」や「紅ほっぺ」は、極上の甘みとジューシーさを誇ります。例年12月頃から5月GW頃まで開園しており、参拝とセットで訪れる王道の観光ルートとして親しまれています。
さらに周辺の飲食店では、由比港直送の桜えびのかき揚げや、用宗港で水揚げされた生しらす丼など、駿河湾の恵みを堪能できる絶品グルメが揃っています。
【久能山東照宮】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:久能山東照宮と日光東照宮はどちらを先にお参りすべきですか?
A1:どちらから参拝しても信仰上の問題はありませんが、歴史の順序としては「久能山に遺骸が埋葬され、その後に日光へ勧請された」という経緯があります。家康公の足跡を忠実に辿りたい場合は、まず久能山東照宮を訪れ、その後に日光東照宮へ参拝すると、両社の繋がりをより深く体感できます。
Q2:1159段の石段を登るのはどれくらい大変ですか?高齢者でも登れますか?
A2:大人の足で片道約20分〜25分程度かかります。一段ごとの段差はそれほど高くありませんが、勾配のある石段が長く続くため、普段運動をしていない方には相応の負荷がかかります。足腰に不安がある方や高齢者の方、小さなお子様連れの場合は、無理をせず「日本平ロープウェイ」を利用するルートを推奨します。
Q3:参拝時の混雑を避けるためのおすすめの時間帯はいつですか?
A3:土日祝日の11時〜14時はロープウェイや周辺道路が混雑しやすくなります。混雑を避けるなら、開門直後の午前9時台か、夕暮れ前の15時以降の参拝がおすすめです。特に夕方の表参道からは、夕日に照らされる駿河湾の美しい景観が楽しめます。
まとめ:家康公の平和への祈りが息づく久能山東照宮へ
戦国の乱世を終わらせ、260年余り続く平和の礎を築いた徳川家康公。自らの肉体を駿河の地に留め、日本の安寧を見守り続けるために選んだ久能山東照宮は、単なる観光名所を超えた深遠な歴史の重みを持っています。
1159段の石段から見渡す駿河湾の絶景、極彩色に輝く国宝社殿、そして街の歴史を物語るプラモデル絵馬や名物いちご狩りまで、久能山には五感を刺激する体験が凝縮されています。旅の計画を立てる際は、ぜひ歴史の背景に思いを馳せながら、この神聖な地へ足を運んでみてください。 (出典: 久能 山 東照宮(Yahoo!ニュース))